幼稚園と違う姿

年少さんのある女の子。「こんにちは」と丁寧に挨拶をして、綺麗に靴を揃えて支度をします。が、レッスンが始まると、全然言うようにしないんです。

言うように、というのは大人が勝手に思い描いている一般的に「こうあって欲しい、こうやって欲しい」と思う姿です。ピアノの曲に合わせて行進。1、2、1、2と手を振り、足を上げ、テンポ良く歩く。これが一般的な理想の姿。でも、にこにこにこにこ笑顔でジャンプしたり、走ったり、ある日は腹ばいになって歩いてみたり、恐竜の真似をしてみたり。とにかく楽しそうなんです。

ある日のレッスンで「お餅つき」をテーマに、曲に合わせてぺったん、ぺったん(2拍子)、ぺったんこ、ぺったんこ(3拍子)と拍子を感じながら手拍子をするという課題がありました。曲を聴き分けてしっかりと(それこそ大人の思う理想の姿で)手拍子をするのですが・・・「お餅が出来たね。ではみんなで食べてみましょう」と言った途端、出来たお餅を両手で抱えて部屋中に投げて配っています。「あ、こっちにも」「それ、こっちにも」どうやらたくさんの動物が隠れているらしく、みんなにお餅を配っているようです。良く見ると、リスのような小さな動物には小さくちぎって渡していますし、ゾウのように大きな動物には大きな塊を投げています。これもまた真剣、そして楽しそう。

音符やリズムもしっかり覚える子ですが、好きなリズムを作って発表し合う時には、独特な抑揚をつけた言い方で時には変な顔をしながら、踊るようなリズムを作る名人になります。
「幼稚園でも、そうやってみんなを笑わせているの?」と尋ねると「幼稚園では、こういうことはしないよ。お家でもしない!」という答えが返ってきました。そう、私がその子に対する第1印象はおしとやかな女の子。明るく、よくお話もするけれども、「ひょうきん」なイメージは全くなかったんですよね。でも今、目の前でクルクルと表情を変えながら嬉しそうにリズムを作っている女の子はまさに「おてんば娘」。そしてその姿は教室でしか見せてないと言うから驚きです。「自分がしたいようにするとピアノからもそういう音がするし、みんな笑ってて楽しいから良いの!」ですって。

このように、幼稚園ではおとなしい、もしくは良い子タイプの子も、たいこらんどでは素の姿を出せることが多いようです。「質問したら、なんでも答えてくれるという安心感があるようです。」と仰っていたお母さんもいました。幼稚園では引っ込み思案で、自分の意見を言うことなんて出来ないそうですが、たいこらんどでは話します。言います。質問します。違うと思ったら声に出すし、楽しいと思ったら笑います。

「ここに通うようになってから積極的になりました。親の想像以上でした。幼稚園の担任の先生も驚いています。」ということも言われました。

これから先、言われたようにしなくてはならない場面はたくさんあります。例え、それが違うかなと思っても、その指示に従わなければならない場面もたくさんあります。だからこそ多感なこの時期には「みんなと同じに言われたようにやる」のではなく、自分の考えたこと、イメージしたことを表に出せる場所も必要だと考えています。

ちょっと人と違う動きをしている子の方が、求められている姿をよく理解していますし、状況によってはすぐにその姿になれることがありますし。

そのおてんば娘も、お母さんがお迎えに来て、「ありがとうございました。さようなら」と頭を下げて帰って行きました。

振り返って笑っていました。